医療通訳士を目指そうと思っていますが、今後需要があるか心配。
機械翻訳やAI通訳機が増えてるので、今後は医療通訳士が不要になるのでは?
そうですよね。せっかく努力して医療通訳士の資格を取っても、今後需要がないのなら不安になっちゃいますよね。
でも、国の政策を見ていると、そうでもなさそうです。むしろ医療通訳士の需要はこれから伸びていくと思われます。
こんにちは。
現役英語医療通訳士 Suzyです。
今回は、読者さんからの質問の中で最も多いこの内容、
「医療通訳士の今後の需要」について、
Suzyがこれまで学んだことをまとめて、ズバリお伝えしたいと思います。
これを読んで、「これから医療通訳士の需要ってあるの?」と思っているあなたの不安がなくなればいいなと思います。
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医療通訳士って本当に必要?
厚生労働省のサイトにあるPDFの一部を紹介します。
外国人患者が安心して日本の医療機関を受診できるよう、また、医療機関が安心して外国人患者に医療を提供できるよう、「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」の選出及び受入体制に係る情報の取りまとめについて(依頼)」(平成 31 年 3 月 26日付け医政総発 0326 第 3 号、観参発 800 号)に基づき選出された医療機関(以下「拠点的な医療機関」という。選出予定であるものを含む。)の機能を強化するため、医療機関における多言語対応を可能とする体制及び医療機関内における一連の手続きをサポートできる体制の構築支援等を行う。本事業を実施する団体(以下、「事業実施者」という。)を選定するため、以下の要領で事業実施者の公募を行う。
出典:https://www.jme.or.jp/news/pdf/210602.pdf
医療通訳者、外国人患者受入れ医療コーディネーター配置等支援事業事業実施者 公募要領
「え?なんのこと?」と思われるかもしれませんね。
つまり、ここで書かれていることはどういうことかというと、「外国人患者さんを受け入れることができる医療機関を募集します」という内容です。
そうなんです。
国は、外国人患者さんを積極的に受け入れてくれる病院を募集しているんです。
選定されるために医療機関は、医療通訳者の手配や外国人医療コーディネーターを配置しなければなりません。
と言うことは、そう、
医療通訳士が必要なんです!
確かにコロナ禍で訪日外国人観光客は激減しました。
そんな中でも政府が打ち出している方向性は、観光立国。
加えて技能実習生も増えています。
それにより、今後は英語・中国語だけに留まらず、アジアの希少言語の通訳需要も伸びてくると言われています。
このような背景から近年、外国人医療に関して日本政府や自治体が大きく動いているそうです。
では、もっと詳しく解説しますね。
医療通訳士の需要
国の政策と訪日外国人数の動き
国の政策と外国人患者対策について、時系列で見てみると、以下のようになります。
- 2007年 観光立国推進基本法が施行され、力強い経済力を取り戻すため国が観光に力を入れ始めました。
- 2010年 国際医療交流(外国人患者の受入れ)の中で、日本の高度な医療を受けることを目的に訪日する外国人に関すること(メディカルツーリズム)が示されたと言われています。
- 2016年 日本再興戦略2016では、観光立国の実現のために、訪日外国人観光客が日本滞在中に医療機関を受診したときにしっかり受け入れられる体制作りを目指しました。
- 2017年 未来投資戦略2017では、それぞれの地域の実情を踏まえて外国人患者受入れ体制を進めていくことが示されました。
- 2018年 訪日外国人に対する適切な医療等の確保に向けた総合対策では、観光で日本を訪れる外国人患者対策が、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策では、在住外国人患者受入れ対策が、それぞれ示されました。
これらのことから分かるように、一般財団法人 日本医療教育財団は「今後も、日本の医療機関を受診する外国人患者が増加すると思われる」としています。
よって、医療通訳士の需要が伸びることが予想されます。
訪日外国人数の推移
新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年から訪日外国人観光客は激減しました。
それでも政府は経済再建のために、観光立国という目標を掲げています。
「2030年の目標ということで、訪日外国人6,000万人と、さらに訪日外国人旅行消費額15兆円という目標がございます。」と観光庁長官会見で発表されています。
近年では、
- 医療安全(言葉の問題によるインシデント)
- 感染症(輸入感染症)
- 未収金(訪日外国人患者の保険未加入)
のような懸念があり、国の体制整備に変化が起きています。
政府は「2020年までに外国人患者を受け入れる医療機関を100ヶ所整備する」という目標を掲げていましたが、一部の先進医療機関だけでは偏りがあるので、地域の医療機関で体制を整備する必要があるとして、動き出しています。
具体的にどういうことかと言うと、厚生労働省と観光庁は、都道府県が主体となって外国人患者を受け入れる地域の拠点的な医療機関の選出を行うことを推進しているのです。
外国人患者受入れに関する地域の拠点的な医療機関として、外国人患者受入れに関して周辺医療機関等をサポートする機能(以下、「拠点医療機関機能」という。)を推進する取組みを行うことにより、周辺医療機関等との連携体制の強化や、地域全体での外国人患者受入れ体制の向上を図ります。
出典:https://www.jme.or.jp/news/pdf/210602.pdf
令和3年度医療通訳者、外国人患者受入れ医療コーディネーター配置等支援事業間接補助事業者(医療機関)の選定に関する公募要領
コロナ以前は、東京・横浜・大阪といった大都市だけではなく、地方を訪れる外国人観光客が増加していましたね。
今後外国人観光客が戻ってきてからも、地方の観光が進む傾向にあるとされています。
これにより、都市部や一部の先進医療機関だけではなく、地方の医療機関でも医療通訳士の需要は高まっていると思われます。
下の図は、政府が公開している資料です。
詳しくは、「第3回 訪日外国人に対する適切な医療等の確保に関するワーキンググループ」をご覧ください。
ここで分かることは、外国人が医療を受けることに関して、様々な対策がなされていると言うことです。
医療通訳士だけが全ての責任を背負う、全ての業務を担うわけではありません。
医療通訳士や医療機関は、他の連携機関と協力し、外国人患者さんが安心して適切な医療を受けられるよう努力することが必要です。
と言っても、やはり外国人患者さんが安心して日本で医療を受けるためには、医療通訳士は大きな鍵となる責任のあるポジションだと言えます。
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対面・遠隔医療通訳士 VS 翻訳・通訳機
近年、自動翻訳機やAI通訳機が普及してきましたよね。
「通訳士って必要なの?」と疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
実は、必要なんです!
実際の医療現場では、医療通訳士は必要不可欠な存在となっています。
そして、医療機関は外国人患者対応のための予算をとって、遠隔通訳用のタブレットや、翻訳機を導入しています。
医療機関における通訳の場面では、「対面・遠隔医療通訳士」と「翻訳・通訳機」はしっかり使い分けがされているのです。
【受付や簡単な問診などの場面】
簡単な言語(英語など)でコミニュケーションを行う
- 院内ボランティアスタッフ(事務職員など)
- 医療以外の通訳者
- 翻訳・通訳機
【医師の診察、治療説明、手術ICなどの場面】
特殊な医療用語が使われ、専門知識・技術が必要
- 対面医療通訳士(院内スタッフ・院外からの派遣)
- ビデオ・電話などの遠隔医療通訳士
あなたが言葉が通じない異国で、病院を受診することを想像してみてください。
もし命に関わるような大切な話を医師から説明されたとき、機械だけを使って通訳されたら、どう思いますか?
ほとんどの方は不安になったり、不信感を抱くと思います。
そういう場面で活躍するのが、資格を持った医療通訳士なのです。
訓練を受けた医療通訳士なら、現場の状況や患者・医療者の反応を読み取り、その場にあった適切な通訳をしようと努力します。
機械翻訳・通訳で果たしてそれができるでしょうか。
また、機械だと誤訳の可能性や危険性もあります。
気軽に使えて便利な反面、そのようなデメリットもあることを知った上で、医療機関では限定的に翻訳・通訳機を活用しているのです。
よって、医療通訳士は、外国人診療の現場では、なくてはならない存在と言えます。
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医療通訳士が見ておきたいリンク集
ここでは、現在医療通訳士として活躍されている方や、今後医療通訳士を目指そうとされている方にとって、役に立ちそうな(学習系ではない)サイトをまとめてみました。
英語医療通訳の勉強法が知りたい!英語医療通訳スキルが気になる!という方は、例えばこちらの「クイックレスポンス」に関する記事をご覧ください↓
「医療通訳士としてこの病院で働きたい・派遣されたい」など、あなたが気になる医療機関が「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」に載っているか、そこで医療通訳士の配置があるかどうかは、こちらで確認できます↓
こちらは「医療通訳配置等間接補助事業」 実施団体(医療機関)の公募についてのお知らせのサイトです↓
こちらの「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」を読むことで、医療機関における医療通訳士の役割が見えてきます↓
こちらは、外国人のための医療機関検索サイト(英語・多言語)です。病状説明の指差しシートなども載っています↓
まとめ
以上のことをまとめると、以下のようになります。
- 医療通訳士って本当に必要か:国は外国人患者を積極的に受け入れてくれる医療機関を募集しており、それらの医療機関では、医療通訳者が必要
- 医療通訳士の需要:厚生労働省は「今後も、日本の医療機関を受診する外国人患者が増加すると思われる」と予測しており、医療通訳士の需要が伸びることが予想される
- 訪日外国人数の推移:今後も訪日外国人の地方観光が加速すると予想され、地方の医療機関でも医療通訳士の需要は高まると思われる
- 対面・遠隔医療通訳士 VS 翻訳・通訳機:医療機関では、「対面・遠隔医療通訳士」と「翻訳・通訳機」は使い分けがされており、診察現場では医療通訳士が必要不可欠
- 医療通訳士が見ておきたいリンク集:医療通訳士が知識として知っておきたい情報が見れるサイト
いかがでしたか?
今回の記事では、医療通訳士の需要があることを、国の政策や訪日外国人観光客の動向などによって解説してみました。
医療通訳士の学習やスキルに関すること以外に知っておきたいことですね。
この記事を読んで、医療通訳士を目指してみたい!と思っていただけると嬉しいです。
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今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました♪
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